世界の終りで愛を歌う
「遅れちゃった! あの本は凄いよ。実君に報告しなきゃ!」
パタパタと足音を立てて教会の前にやって来た詠美。
彼女は、黒の本に相対する白の本を手にした。
体からは、より神の力がほとばしっていた。
まるで沸き上がるように。
私も昔はそうだった。
心が熱くなり、燃えているようだ。
水によりバプテスマではなく、
より高い次元の火と聖霊のバプテスマだ。
もっとも、後者はバプテスマの儀式では手に入らない。
その火と精霊の力を、
白の本の助けもなしに、
しかもこの若さで手にした実の才能は凄まじい。
だが、その才能が仇となる。
神はミスをした。切札の20人の人間の一人が、
悪に走る事になる。普通の人間ならまだしも――神の悔しがる顔が見える。
ような気がする。それとも、
こうなる事も全てお見通しだと言うのだろうか?
何はともあれ、私は神に近づいた。
その20人の中の一人に。
神の剣は私の手のひらに収まろうとしていた。
この私の手に。この私の……。