世界の終りで愛を歌う
何故、詠美ちゃんは俺の言葉をここまで信じる事が出来るんだ?
こんないい加減なふりをしている俺の……。
実は詠美の言葉に動揺している。
彼は信じる事も、信じられる事も好きだ。
だが、真っ直ぐに来られては戸惑ってしまうらしい。
やはり、黒の本は詠美が持てば――悔やんでみても仕方ない。
しかし、これも神の力のせいなのだろうか?
黒の本に気がついたのは、
詠美が先だ。だが、それを実が先に手にし、
遠く離れた白い本を見つけて、
詠美に持って来させた。
実は黒の本の本質を直感で感じていたのか?
数々の奇跡を起こした経験がある彼はやはり侮れない。
いずれ来るあの時に敵に回れば、
愉しくもあるが、強大な障害となるだろう。
「じゃあ、帰ろうか。白い本を大切にね。僕も大切にする。でも、読まずに僕の場合は金庫に入れるけどね」
恐ろしい男だ。私の暗殺者を牢に閉じ込めるつもりらしい。
神よ……貴方は私の上を常に行きなさる。
私が勝てる時は来るのだろうか?
希望と絶望。絶望を愛し、
それを人間に推奨する私にはふさわしい境遇と言えるが――しかし……しかし!