アルバイト執事にご用心
ゼイルは困った顔をして手を止めた。

顔色も少し悪くなっている。


しばらくして、クスクス笑いながらクアントは言った。


「深く考えてはいけないよ。
私は自分の目で信頼できる男をこうやって見つけてきた。
それだけだ・・・それを娘がわかろうとしなかったからって、それは運命だからね。

君には申し訳ないことになってしまうけれど、もし、うちの娘が嫌でなければ世話してやってくれないかな。」


「はい、それはもちろん。」


「じゃ、しばらく休憩してお昼から仕事をしようか。」


「はい。」




夕飯後、クレアは買い物してきた服やアクセサリーを身に着け、父親に見せていた。


「パパ、こんな感じで明日はいいかしら?」


「たかがボーイフレンドにけっこう金がかかってるじゃないか。」


「そうだけど、わざわざ父親もいる家に堂々と乗り込んでくるのよ。
外で会うわけじゃないし、Tシャツにズボンで・・・ってわけにはいかないでしょ。」



「確かにそうだねぇ。
父さんならそんな家、行かないけどね。」


「もう、父さんがデートするわけじゃないんだから・・・。
そもそも明日来るのを仰せつかってしまったのは父さんじゃない!」


「そりゃ、そうだけど・・・ちょっと気合入りすぎてないか。」


「そうかなぁ。ねぇねぇゼイルはどう思う?」


「女性の趣味はよくわからないけど、似合ってると思う。」


「そう、ゼイルが否定しないっていうのは、かなりいいって理解していいのね。うふふ。
ナルベルってふだんもけっこういい服を着てるから悩んじゃうけど、このくらいはしないとね。」



「で、おまえはナルベルとつきあうことはどう思ってるんだ?
その感じでは、いい印象があるみたいだけど。」


「まぁ、ゼイルよりはいい印象かも。
第一お金持ちだもんね。
さてと、着る服が決まったら明日の準備して寝るわ。
おやすみ、パパ。」


「ああ、おやすみ。」


「やっぱり俺は嫌われてますね。」


「すまない、見る目がない子で・・・。」


「合コンをぶちこわしたことを怒っているんでしょう。」


「私が言うのもナンだけど・・・娘に何かいいアプローチした方がいいんじゃないかな。」


「そ、それは・・・できません。」


「君も真面目だねぇ。」


「まだ、そんな時期じゃないと思っています。」


「いいのかい?明日の様子如何では、ナルベル君とつきあってしまうかもしれないよ。」


「それは・・・また明日以降考えます。」


「若いっていいねぇ。」


ゼイルは少し考え気味に部屋にもどっていった。

そして分厚い本の山から本を取り出して読みふける。


「俺がここに来た意味は・・・彼女を守ることだから。」
< 7 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop