魁の沙羅双樹
人の命を奪うというのは
一体どういうことだろう?
「彩華」
暖かい日差しの中で
ふいに低い声がこだまする。
桜は相変わらず美しく咲き誇り
空には鳥が飛んでいる。
「なんでしょう」
「てめえ、昨日またやりやがったな」
少女の名は、彩華。
眉間に皺を寄せて
不機嫌そうな顔をする男は
彩華を見下ろす。
「やりやがった、ってなんですか?
ああ、もしかして……"斬った"って事ですか?」
「………お前、もうやめろって言われてんだろ。
知らねえぞ」
「人斬りが、人を斬って何が悪いんでしょう?」
脅しなのか、それとも警告なのか
男は彩華にそう言うが
さらりと返されてしまう。
「人斬りは人斬りでも、お前は"長州藩の"人斬りだ。
何回言えばわかるんだよ」
「………わかりましたよ。
だからもう睨まないでください高杉先輩」
やれやれ、と首を振った
男───高杉晋作は
彩華の頭をくしゃっと撫でた。