魁の沙羅双樹
「桂先輩、入りますよ」
返事が来る前に、襖を開ける。
それは彩華にとって当たり前の事。
スパン、と心地よい乾いた音を響かせて
部屋に春の空気が流れ込んだ。
と、そこで
畳の中心で火鉢に当たりながら
背筋を震わせる人影がひとつ
彩華の目に飛び込む。
「はぁ、……桂先輩?
生きてますか?」
「ふっ、襖!襖を早く閉めて!」
顔を青白くさせながら叫ぶその人物は
呆れ顔で仁王立ちをする彩華にそう頼む。