魁の沙羅双樹
「桂先輩。もう春です。
火鉢はしまってください」
「春だから火鉢をしまえというのは、僕には意味がわかりません。
というか彩華くん、君その格好、大丈夫ですか?」
膝より上の裾丈の彩華の着物を見て
桂────…桂小五郎は顔を青くさせる。
「この方が動きやすいんですよ。
何より、全然寒くないですから」
「女子がそんな格好をして…
襲われても知りませんよ?
あと、そろそろ襖を閉めてください。僕が寒気に襲われてます」
そう言う桂の顔は確かに青白くて
彩華は仕方なく襖を閉める。
「その寒がり、いい加減どうにかならないんですか?」
「生まれつきですからね。
僕だって外に行くとき不便ですから嫌なんですよ」
ふう、と一息ついて
もう一枚羽織を着た桂は
視線で彩華に、座るように命じた
「話がある、と高杉先輩から聞きました」
「その通りです。
最近の君の行いについて、それと今後について少し」
彩華は、腰に差した刀を脇に置いて
桂の前に座った。