記憶 ―黄昏の蝶―
じぃさんの話す夢の世界は、まるで本当に見てきた様に明確だった。
じぃさんは机の中から、昔自分で描いたという1枚の絵画を取り出した。
羽根の生えた人間たちが、幾つもの星が光る闇夜の中で笑っている絵だった。
「…羽根?」
「妖精じゃよ。背中に蝶々の様な羽根が生えておる…。妖精は魔法を使うんじゃ。…大人になるにつれ、前世の夢を見る頻度が減っていくからのぅ…。忘れぬ内にと、青年期に描いたんじゃ…」
「…魔法を…」
「わしは彼らを見守る、森の中の大樹じゃった様だがのぅ…」
魔法という単語が出て、
俺は全てをじぃさんに話した。
同一人物なんじゃないかと、確信に近いものがあった。
じぃさんは、
静かに俺の話に頷いていた。
「……信じるか?」
「リュウは、嘘は言わん。そりゃ確かじゃ…。」
俺自身が現実だったと自信を持てない現象なのに、じぃさんが本当に信じてくれたのか、不安だった。
心が落ち着かなかった。
「…そうか…。ユラ…いや、ユピテルは『光から逃げる為に、その街へ行く』と言ったのか…」
「あぁ、確かそう言った。」
意味は分からないが、『自分は蝶々と同じ様なものだから』とも言っていた。