記憶 ―黄昏の蝶―
「…あぁ、彼も言っていたよ。光から逃げてきたんじゃと…。わしの居た前世の世界、その始まりは彼じゃ。彼は、世界を移動するという七色に光る街から現れた…」
「…とある街ってやつか?」
非現実過ぎて、信じきれない。
今、俺がじぃさんと話している現状さえ、現実なのかどうか疑わしく思えた。
「…ユピテルは我々に魔法を掛けて記憶を操り、リュウに語った通り…、行ってしまったんじゃろうな?その地へ…」
「……本当に、そんな街が…あの絶壁の崖の上に在るのか…?」
この水場の向こう、
未だ見ぬ星の裏側に…?
「…分からん。しかし、彼はあの闇夜の地に来た。闇夜の世界で、これから人々を導き…、神と呼ばれる存在になるんじゃよ…。そうじゃったか…、この地から来たのか…」
じぃさんは時折、俺には全く理解出来ない事を話したが、それ以上は説明をしなかった。
俺は、何か間違ったのか?
あの氷から彼を逃がした俺は、
何か間違ったのか…
「…俺は、どうしたらいい?」
「――…何も…。」
じぃさんは静かに、
涙ぐむ瞳を拭いながら、穏やかに笑った。
「…お前さんが、わしの…、わしらの運命を繋いだんじゃ。」
「――…?」