記憶 ―黄昏の蝶―
「――あ!あとカロリスの人柱について書かれてるのが欲しい。探せ、ジーク!」
「…はいはい、リュウ様。」
俺は手当たり次第に資料を開き絨毯に放り、ジークは放った資料を拾い集めながら再度目を通し…、それを繰り返していた。
『カロリスは神の怒りによって起こった天災により…』
『それを鎮める為、神に人柱を捧げたとされるが真相は分かっていない』
「――どれもこれも!詳しく書いてある資料なんてねぇじゃねぇか!協会本部の資料室でこれかよ!?」
幼い子供が学校で習う様な簡単な事しか書いていない。
「落ち着けよ、リュウ。まぁ、ほとんど人から人へ語られて薄れてった伝承だからなぁ…。何をそんなに焦ってるんだ?」
「………」
「まぁ答えたくないなら良いけど。これ手伝うから、例の件カイトに御膳立てしてくれよ?」
「…まだ諦めてねぇのか、ジーク。俺が言ったって変わらねぇって…」
…あれだ。
カイトの実の父親であるジークは、一緒に暮らしたいという申し出を何度も本人に断られているのだ。
「俺ももう年だからね。死ぬ前に1度で良いから、息子と暮らしてみたいんだよ…」