記憶 ―黄昏の蝶―


気持ちは分からんでもない。
そう話すジークの表情は、いつになく真剣だった。


「…死ぬ前に…ね。じゃあ急いで探せよ、ジーク。」

「…は?」

「……あの神の住む星が近付いて来る。じじぃ供は喜んでるが、…俺の予想だと、この地の全員が死ぬだろ。」

「…え…」

「死が喜ばしいなんて、老いたじじぃ供のバカな考えだ。」

俺は視線は資料の文字を追ったまま、表情1つ変えずにそう言った。


「……異端者…」

ジークはそう口に出した。
それに反応して、俺の全ての動きが止まった。

現在ではなかなか居ないが、その昔、協会の異端者は、このカロリスから追い出されたと聞いている。


「……異端者でも構わねぇよ、この際。元々俺の信仰心は薄っぺらい…。でも尋問やら、俺をじじぃにつき出すなら後にしてくれ、今は…」

「――違う違う、資料に書いてあるんだよ。『協会設立以来、初めての異端者は…』これ、読んでみろ。」

ジークは立ち上がり、俺に開いた資料を差し出した。
俺はそれを受け取りながら、溜め息を漏らす。


「…協会を良く思ってない連中なら、今もカロリスの外れに溜まって住んでるだろ。協会に入りたての頃に、俺も誘拐されそうになった事が……」

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