記憶 ―黄昏の蝶―
こういったやり取りの中で、カイトは代わりに土を貰い受けているのだろう。
「……で?舟で固まってる新顔、誰だぁ?カイト。」
アキラという青年は水草と干し肉を両手に持ち、上機嫌でそう聞いた。
俺はハッとして、建物の上にいる彼らに近付きながら、
「あ、はじめまして。えぇと…」
と口を濁していた。
協会の白ケープは脱いでいるとはいえ、どちらの態度で彼に接するべきか悩んだせいだ。
協会の幹部仕様か、
普段の偽り無い俺仕様か…
「リュウちゃん」
「…あぁ、例の…。」
俺が悩んでいる内に、2人の間ではそれだけで済んでしまっていた。
『例の…』という事は、
『協会の光の子』と認識されてしまったのだろう。
攻撃的な態度に出られるのかと心配したが、アキラは表情1つ変えず、
「まぁ、とりあえず入んなよ」
と俺を家に招き入れてくれた。
正直、拍子抜けだった。
攻撃的でも無ければ、街の住民たちの様に光の子である俺を敬う訳でも無い。
昔から知っている孤児院の家族以外から、初対面で対等に扱われた事が久々で、嬉しささえ込み上げた。