記憶 ―黄昏の蝶―


アキラの話だと、
水場側の住民と、崖側の住民では温度差があるらしい。

古い時代には、カロリスを追われた異端者は崖を掘り、その中で崖を住居として暮らしていたという。

次第に世代が進むごとに、アキラの様に水場の岩に住居を構える者が増えたそうだ。


「崖側の住民は、まだ昔の名残が残ってるから…。リュウちゃん、外に出るなら金首飾りは隠しといた方が良いよ?」

なるほど…
以前に俺を誘拐しようとした者は、崖側の住民という事か…


「で?リュウちゃん、仕事がらみで来たの?遊びに来たの?」

アキラは上機嫌に、彼にとってはご馳走である干し肉を噛み締めながら、俺の瞳を覗き込む。


「あぁ、えぇと…個人的に調べたい事があってな。空の白い星が近付いて、気温が上がってる。それを調べる内に、初代の法皇が異端者としてカロリスの外れに追われたと聞いて…」

「…はぁ。その話、難しい?」

「どうかな、難しくはないが…」

アキラは瞳をパチクリさせて、首を横に傾げていた。
話を聞いているカイトもまた、同様に理解が出来ていないようだ。


「…出来れば…そこら辺に詳しい年配者から、話を聞きたいんだが……」

「――そうだな!」

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