記憶 ―黄昏の蝶―
「…んじゃあ、俺っちちょっと行って聞いてくるから。リュウちゃん、カイトと水遊びして待ってなよ!」
「…水遊びぃ…?」
カイトと遊んでいる場合ではないし、それは勘弁して貰いたいのだが…と、俺は嫌な顔をしてカイトを見る。
「――『水遊び』じゃない!『土拾い』だよ!!」
カイトは大声をあげて、アキラに反論していた。
「え~?リュウちゃん、カイト下手なんだよ?土拾いするのに、水を無駄にバシャバシャと…。それでいつも手伝わされてんだ、俺…」
「…あぁ~…なるほど」
コイツ泳ぐのも下手だったな…
ここまで乗せてくれた恩もあるし、仕方無いから手伝うか…。
……罵りながら。
俺が鼻で笑いながら立ち上がると、カイトは俺の意図を感じ取ってか、ビクリと身を引いた。
「着替えなら、俺の使っていいから~!リュウちゃん、首飾り隠してね~?」
アキラはそう声だけを残して家を出た。
隠した方が良いならば、俺の「名前」やら「首飾り」やらを、大きな声に出さないでくれよ…。
そう思ったが、
口には出さなかった。
カイトに愚痴を溢したところで、理解して同調してくれはしないだろう。
考えが浅い所がよく似ている。