記憶 ―黄昏の蝶―
「…じぃさんが居るのに、アキラは崖から出て1人で暮らしているんだなぁ…」
俺は土拾いを程々にサボりながら、独り言の様にカイトに問い掛けた。
アキラの言っていた通り、カイトはバシャバシャと水音を立てながら手探りで水底を漁っていた。
太股辺り迄しかない深さで、どうしてもっと器用に土を集められないのか、俺には理解出来ない。
「…あれでしょ~?崖側は若者にとっては窮屈なんでしょ~?」
「ふーん、一緒に暮らせばいいのになぁ…。折角、家族が居るんだから、なぁ…?」
「……とか何とか言って!リュウちゃんもシツコイね!またジークに頼まれたんだろ!」
あぁ、バレた。
流石に学習した様だ。
「何でそんなに嫌がるんだよ。死ぬ前に一度でいいから一緒に暮らしたいって、ジーク珍しく真剣だったぞ?」
「…嫌って訳じゃないけど!今更じゃん!この歳で照れ臭いじゃん!…ってゆーか、リュウちゃん?サボんないで!」
「へいへい」
水草を編み摘めたカゴで水底を漁り、すくい上げて土をなるべく残す様に水を逃がす。
この単純作業には飽きていた。
「お前、動作が雑!土が水の中に逃げねぇ様に、そぉっとやれよ!不器用!」
「やってるよ!」