記憶 ―黄昏の蝶―
この国では、
「協会」の権力が絶対なのだ。
「…カイト~、あんまり俺を困らせるなよ?いつまで経っても定職に就かない。じじぃ共を欺くのも楽じゃねぇんだよ…」
はぁ…と溜め息を漏らしながら、たった一年だけの年上風を吹かせる。
「…げぇ、説教!?説教すんなら舟降りてよー。リュウちゃん泳いで帰れば~?」
「ヤダよ、面倒くせぇ。同じ家に帰るってのに…」
ここはまだ街の中心部。
街外れの孤児院までは結構な距離がある。
それを分かった上で、
カイトは意地悪を言うのだ。
「白いケープは濡らしちゃマズイだろうから、預かっててあげるよ~?」
「悪かったって。乗せろよ。」
俺がそう謝っても尚、カイトは攻撃の手を緩めなかった。
「遠慮しないで泳げって~。リュウちゃん『人魚』なんだからさー!この距離ならこのボロ舟より速いじゃん?」
「…人魚だって、疲れてりゃ泳ぎたくねぇ日もあるんだよ…」
乗せて帰ってください。
と俺は頭を下げ、
奴は偉そうに、
「今後も、俺と孤児院の為に精進するように!」
と張り切って舟を漕ぎ出した。
こんな光景…
協会の奴等にバレたら、えらい騒ぎだ…。