記憶 ―黄昏の蝶―
「――あれ?君…」
男は俺の顔をじっと見たまま、首を傾げていた。
「…アキラの友達で、リュ…」
「――あぁあ!!聞いてる、聞いてる!アキラの友達ね!いつも有り難うね~?…こっち!おいで~!」
「――!?」
唐突に腕を引っ張られ、
物凄い勢いで人々から離され、俺は建物の中に連れて行かれたのだった。
聞いているはずがない。
俺は今日アキラと出会ったばかりで、父親に話す機会も無かったはずなのだ。
建物の中に入り、扉を閉めると、彼の明るかった表情が深刻な物に変わっていた。
「――光の御子、だね?」
「………はい」
つい身構えた。
何を言われるのか、
何をされるのか、息を飲んだ。
「――ダメでしょ!?」
「―…ぇ?」
「ダメでしょ、安易に名乗らないの!協会の光の子は、こっちでも有名なんだから。『あっ、そう』で済まない人間も居るんだからね?」
アラタはまるで幼い子供を叱る様に言うと、身構える俺に笑顔を向けた。
彼ら初代法皇の子孫たちは、彼の言う『あっ、そう』で済む部類の人間らしい。
それが判っただけでも救いだ。
「…で?ただの崖の上見学って訳でもなさそうだね~?」