記憶 ―黄昏の蝶―
「…目的は別にあるので…」
「…うん?大体は予想つくよ。街の舟師たちが話す内容は、最近はそればかりだから。こっちに伝わる人柱の伝承を知ってる人間も多いからねぇ~…」
「…ユピテルを、追いたいんです。七色に光る街が本当に在るのだとしたら…」
俺がそう言うと、アラタは溜め息を漏らして言った。
「――…無いよ。」
「…無い?じゃあ…彼は何処に行ったと言うんです?」
ははは…と、
まさかこの崖の上に留まっているとでも言うのか?と、俺は渇いた笑いを漏らした。
「…ん~?不思議な現象って有るんだねぇ?正確には、『俺たちには見付けられない』が正しいのかなぁ?勿論、ユピテルも、その街も…誰も見た事が無い。」
「――じゃあ…」
じゃあ、
どうしたら良いんだっ!?
俺はその言葉を飲み込んだ。
誰に問い掛けようと答えは出ない質問だった。
言葉を失って、
俺は瞳を床に向けていた。
「…1つ、可能性があるとして…君は『光の御子』だから…」
「……星の声、ですか?」
ふと瞳を上げて、彼を見る。
「あ、聞いた?」とアラタは首を傾げていた。
「お祖父さんが、そんな事をボソッと…。詳しくまでは…」