記憶 ―黄昏の蝶―
「まぁ、これも言い伝えでしかないから、俺は本当かは知らないけど~。案内するよ?光の御子様?」
そう言うと、
アラタは椅子から立ち上がり、俺を外へと連れ出した。
人々の輪を抜け、
土の大地を踏みしめて、
カロリスには無い木々の群れを抜ける。
視界が開けると、
そこには、
ポッカリと空いた、
土しか無い大地が在った。
「…ここ、ですか?」
「この先は、土が駄目なのか何度試しても木が生えない大地でね~?何も無い。」
アラタの言う通り、
俺が目にしているのは真っ暗な闇ばかりで、幾らランプを照らしてみても何の影も無かった。
「…あそこ。」
彼の指差す方向に進むと、建造物らしき残骸に行き当たった。
「…これは?」
「俺に聞かれてもねぇ…、昔の人の遺した物?何かの祭壇かねぇ?」
…分からない訳か。
それは崩れ落ちた祭壇の様な形で、拡がる土の大地からは一段高い位置に作られていた。
「…この上で、星の声を聞いたって伝承。俺が知ってるのは、それまで。」
「…はぁ。ここで、聞く…?どうやって…?」
「だから知らないよ。俺たち、光の御子じゃないもん。」
アラタは自信たっぷりにそう言い切った。