記憶 ―黄昏の蝶―
瞳を閉じても、
瞼を上げてみても、
風景は何も変わらずで、
自分が起きているかどうかも分からない。
まるで、自分がこの闇に溶け込んで消えてしまったかの様に思えた。
しかし、
確かに「声」を聞いた。
『ラディスのユピテルが…』
『星を渡った…』
それは、
誰かが会話している声だった。
『彼は運命を……』
『彼は自分の定めを捨てた』
『誰が運命を紡ぐ…?』
全てが鮮明に聞こえる訳でなく、会話の全容は分からない。
『名を継ぐ者を得なければ』
『もう目処はついてる…』
『準備されていたかの様だ…』
『逃がされたのも運命か』
『使者を送ったよ』
『待とう』
『…星が集まり始めてる…』
『待とう』
『星たちが1つになる前に…』
『……早く』
意味は分からなかった。