記憶 ―黄昏の蝶―
白く光る蝶が、
俺の体の中に溶けた瞬間から、
俺は暫くの間気を失った。
まるで、
闇の季節に俺が見るはずだった夢を、今更ながら取り戻すかの様に、様々な情報が一気に頭の中を巡った。
音は無く、
映像だけがグルグルと、
駆け抜ける様な速さだった。
どんな内容だったか?
具体的な、当てはまる言葉を選ぶのが難しい。
じぃさんやアキラの夢の様な光の射さない暗い世界でもなく、レンが見た様な砂ばかりの世界でもない。
カイトが見たヤキュウをして皆とワイワイ駆け回る夢でも勿論なく…。
これまでに住民たちが見たという前世の、俺が知るどの情報とも違う。
もっと…
根本的な、「大きな何か」…
変動する「世界」を、見た。
そして目覚めると、
不思議と訳も分からない「何か」を、理解していた。
「…その顔は…。答えは、見つかったのかのぅ?」
お祖父さんは相変わらず衣服を目深に被って、その表情を見せようとはしなかった。
「…あぁ、多分。」
俺は切り立つ崖内部のお祖父さんの部屋に戻って来ていた。
もう協会の幹部の顔をして媚びる必要もなかった。