記憶 ―黄昏の蝶―
「…なに…何を言い出すかと思えば、可笑しな事を…。お前さんは人魚じゃ。他の住民と変わらんじゃろ?」
静かに首を横に振った。
この星の住民は、
確かに、人魚か双子。
「…馬鹿な事を…。確かにお前さんを保護した経緯は、その通りじゃが…」
「俺に与えられた体は、人魚だった。でも、きっと…中身は違うんだ。アイツ…ユピテルと、多分同じ存在なんだ…」
「……な…に…?」
じぃさんは深刻な表情のまま、俺の顔を見つめ続けていた。
俺は崖の上にある祭壇に、
星を渡りやって来た、
あの白き星の欠片…
「…双子は、闇の季節に同じ内容の夢を見る。あっちのじぃさんが言ってたよ。ユピテルはこの地から…じぃさんの前世の世界へ来たんだって…。あんたも知ってるはずだ。」
「…それは…」
「聞いたよ。羽根の生えた人間が、魔法と呼ばれる不思議な力を使う世界の話を…。ユピテルは、そこで人々を導く…。」
そう。
だから、この星には戻らない。
「…答えが、見付かったんだ…。ユピテルは追い掛けない。」
俺は何をしてるんだ…。
自分だけが知っていれば良いものを、どうして彼に話しているんだか、自分でも分からない。