記憶 ―黄昏の蝶―
この顔のせいだ。
院長のじぃさんにそっくりな、この人にだからこそ、聞いて貰いたかったんだろう。
到底、本人には話せない。
下手したら、良い年こいて泣き出すかもしれないな、俺が…。
「…とにかく、有り難う。あんたたち兄弟に拾われて、本当に良かったよ。」
俺はそう言うと、足早にその場を去ろうと立ち上がった。
「…ま、待て!どういう事じゃ!…答えとは!お前さん、何を…」
じぃさんは慌てて立ち上がるが、俺を捕まえようとする手は宙を掴んだ。
「…じぃさん、長生きしてくれ。あの星に神は居ない。それは正しいよ…。大丈夫、『天災』は起こらない様にするよ。」
「待て!待つんじゃ…リュウ!」
呼び止めようとする彼に背を向け、俺は振り返らずにその場から離れた。
そっくりだな…。
見た目は勿論、その声も。
俺を心配してくれる、
その優しさも…。
だからこそ、
振り返れはしなかった。
「…やるべき事は、見付かったんだ…」
崖の道から表に出ると、
俺を待ち構えていたかの様に、そこにはアキラが立っていた。
外は、眩しい光の季節。
隣りには、
帰したはずのカイトが居た。