記憶 ―黄昏の蝶―
急な眩しさに瞳を細めながら、何よりも驚いたのが、未だここにカイトが居る事だった。
「…カイト!?お前、何してるんだよ!帰れって…伝わらなかったのか!?」
足早に彼らに近付きながらアキラの方を見ると、アキラは「伝えたよ」と慌てて小刻みに首を振っていた。
「――リュウちゃん!帰ったよ!一回帰ったんだよ?でもね…?」
「…でも?」
珍しく深刻な表情のカイトに、嫌な予感はしていた。
「…子供たちの風邪がビビにも移ったみたいで…、ビビまで倒れたんだ。」
「……何だって…」
カロリスの外れに出掛ける俺を心配し、それでも『いってらっしゃい』と普段通りに笑うビビの顔が俺の頭の中を横切った。
ビビもまた、
『人魚』だった。
「詳しくは分からないけど…リュウちゃんに急いで帰って貰わなきゃと思って…!」
「…大人にまで…、もう症状が出始めたのか…?」
…早い。
あの星の影響は、俺の想像より遥かに早く出始めていた。
「――本当に風邪!?ジークまで何か元気ないし…!リュウちゃん、何か隠してない!?」
「………急いで帰ろう…」
答えをはぐらかした俺の態度にカイトは納得せず、進もうとする俺の肩を掴んだ。