記憶 ―黄昏の蝶―


「――リュウちゃん!!俺だってバカじゃない。もう気付いてるよ!倒れてるのが『人魚だけ』なんだって事ぐらい!!」

「…カイト…」

「理由もなく協会の幹部のリュウちゃんが、カロリスの外れに来る訳がないし。何かあるんだろっ!?説明くらいしてよ!」

「……それは言えない。」

俺が首を横に振ると、
カイトは頭に血が昇ったのか、掴んでいた俺の肩を力一杯に突き飛ばした。

その拍子に俺は体勢を崩し、
「バシャン!」と大きな音をたてて水場に尻餅を着いた。


「……痛ぇなぁ。しかも濡れたじゃねぇかよ…。てめぇ、何してくれてんだ…」

カイトに浴びせる俺の言葉に、普段の様な覇気はない。

悪いのは俺だ。
カイトに怒れやしない。

尻餅を着いたままカイトを見上げると、腕を組んでそっぽを向いて俺にこう言った。


「…丁度いいだろ?俺は知らせに来ただけだから!リュウちゃん、そのまま泳いで帰れよ!!」

「…おいおい、そりゃ何でも…」

端から俺たちの喧嘩を見ていたアキラがカイトをなだめていたが、俺は「ははは」と可笑しくて笑っていた。

カイトは何も「舟に乗せない」と言っている訳ではない。

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