記憶 ―黄昏の蝶―
――…バタンッ…!!
そう大きな音をたて、
俺は息も調わないまま乱暴に孤児院の扉を開けた。
はぁ…はぁ…
人魚である俺の体にも少なからず影響があるのか、全速力で泳いだとはいえ、普段より体に重さを感じていた。
「……リュウ!!」
出迎えたのはジークだった。
俺が泳いで帰るのを見越してか、その手には水を拭う白い布を持っていた。
「…はぁ…はぁ…。ジーク…、ビビは!?子供たちは…?」
「大丈夫、看病疲れが重なって体調を悪くしただけみたいだ…。少し休ませたら大分落ち着いたよ…。今も部屋で眠ってる。子供たちも悪化はしてない…」
ジークは俺の頭に布をかぶせ、水を拭いてくれながら、落ち着いた口調でそう話した。
それを聞いて、
「そうか…」と溜め息を漏らし、やっと少し安心出来た。
「悪いな、心配したろ。帰って来たカイトをすぐにそっちに戻した時は、もっと深刻な事態かと…俺も焦っちゃってさ?」
確かにあの時のカイトの口調から察するに、カイト自身も今必死になって帰りの舟を漕いでいるだろう。
「あぁ、いいんだ。…深刻には変わりない。悪いな、ジーク。ずっと居てくれたんだろ?」