記憶 ―黄昏の蝶―


じとっと俺を睨むカイトに、

「…何だよ…」

と問うが、
嫌な予感がしていた。


「……水の中に、落とした。」

どうやら商売道具である「土入りの瓶」を一つ、落としたらしい。


「残念だったな。」

「…つれない。リュウちゃん、…拾ってきて?」

「――…は!?」

なにか?
せっかく濡れずに済んだというのに、疲れてるというのに…

俺に潜って拾って来いと…?


「瓶の一個くらい諦めろよ。」

「大事なんだよ~?土の尊さを分かってない!協会の一員のくせに助けを求める民を見捨てるのかー!?」

こいつ…
今、「協会」の名を出すのか。
…卑怯者め。

ギロリとカイトを睨むが、そんな脅しは奴には無用だった。


「あぁ~好意で家まで送ってあげた民が困ってるのにー、協会の金首飾りのくせに~…」

「…わかった、わかったよ!」

俺はげっそりと、
渋々溜め息を漏らしながらケープを脱ぎ捨てた。


「…この下か?」

奴の隣まで歩き俺が聞くと、カイトはご満悦の表情でニコニコと「そうだ」と肯定する。


「あははー、悪いなぁ。でも俺は人魚じゃないから、こんな深い所へ潜れないし~?頼むね?」


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