記憶 ―黄昏の蝶―


星の欠片である俺に、…子供。

彼女に、
残してゆけるもの…。

俺が…ここで生きた「証」。



「……俺、の…」

ビビの下腹部に手を当てて、
知らずの内に目頭は熱くなっていた。


「ちょっと!嫌だ、泣かないでよ!リュウったら…もう…」

今度はビビが俺を抱き締める。


一層に愛しさは込み上げて、
同時に感じる一層の悲しさと、
君たちを守ろうとする決意と…

俺の心の中は、
これまでにない位に忙しい。



「…この孤児院で育って、今までも家族だったけど…。あたしたち、これで『本当の家族』になるのよ…?」

「…あぁ…」


何て…
優しい言葉なんだろう。

これまで生きてきた中で、
1番充たされる言葉を、
1番に愛しい人から貰った。



「…ありがとう、ビビ…」

「……こちらこそ。」

クスクスと、
2人で笑い合っていた。

この孤児院で育った俺たちが、
この身の上だからこそ分かる、
「家族」がいる有り難さ。


「…やっぱり俺たち2人の子は、人魚かな…。双子も騒がしくて良いなぁ…」

「うふふ…。さぁ?」

見れないかもしれない日々。
それを想像すると、自然と頬がゆるんだ。


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