記憶 ―黄昏の蝶―


さぁ…
何から…誰に…
どう伝えようか…。

これから起こる「真実」を。



「…どうしよう。協会本部なんて入る事すらあんまり無いのに…。よりよって法皇の部屋なんて……」

俺の横にはカイト。
カイトはそう緊張で声を震わせていた。

ここは、
協会本部のじじぃの部屋の前。


「そう緊張するなよ。ただの老いぼれたじじぃだから。」

俺にとっては何度訪れたか分からない程に慣れ親しんだ部屋だが、一般の住民にとっては大層な場所らしい。

部屋に通され法皇と対面する形で腰を掛けると、カイトは更に挙動不審な態度を隠し切れずにいた。


「…あ…あの。こんにちは。父のジークがお世話になってます…」

瞳を病んだ法皇でも察する程にその挨拶の声は上ずり、隣りで俺は苦笑を漏らす。


「…そう緊張せんで良いわ…。只の、老いぼれたじじぃだからの。なぁ?リュウ。」

「…相変わらずの地獄耳で。」

扉を挟んでの廊下での俺の言葉を聞かれていた様だが、顔色を変えない俺に、法皇は不服そうだった。

カイトばかりが焦ってオロオロと俺たちの様子を伺っている。

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