記憶 ―黄昏の蝶―


「カロリスの気温上昇、水場の水位、法皇は神の住む星が我々に近付いて来ていると喜んだ…。俺はそれに疑問を持った。」

「…ほぅ?」

「ただの風邪だと思われているが、街で今体調を崩しているのは、脱水症状の『人魚』ばかりだ…。幸い未だ症状は軽い…」

「…あぁ、やはり人魚ばかりか…。未だ住民に伏せてはいるが、医者たちも少なからず、そう推測をし始めていたよ…」

法皇の苦悩の顔。
能天気なカイトでさえ気付き始めていたのだから、そう不安がる住民たちも多いはずだ。


「…このままだと、人魚だけでなく双子たち…、この星の人間全てが、白い星の光に焼かれて……死ぬ。」

「――はっ!?」

俺の言葉に間髪を入れず、そう予想通りの反応をしたのは、勿論横に居たカイト。

法皇は白く濁った瞳を大きく開け、見えないはずの俺の表情を探っている様だった。


「――なに、何、なに…。あはは~…リュウちゃん、ちょっと…マジで言ってる?それ…」

「……あぁ。」

カイトの半笑いの声が静まると、俺たち全員の顔からは表情が消えていた。


「この街の信仰では…、死ぬと『神の住む白い星に行ける』と言われてるだろ。でもな…」

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