記憶 ―黄昏の蝶―
俺が心配していたのは、
そこだった。
『喜んで死を受け入れよう』と法皇に言われてしまえば、この話はここまでで終わりだ。
「…この星の住民、全員が死なずに助かる道を探すべきだと思った。何もせずに死ぬべきじゃない。今の平穏な暮らしを守るのも協会の役目だろ?」
「…確かに。しかし信仰故に複雑だな…。あの白い星が我々に歩み寄って来てくれているというのに、身体には害とは…」
「…だから、信仰が邪魔なんだよ。あれは『ただの星』だと思って考えて欲しい。あの星が俺たちに近付いて来ているんじゃない。俺たちの星が、あっちに吸い寄せられてるんだ。」
「何?では我々が神に呼ばれている…という事になるのか?」
「だから!信仰やら神は、今は置いとけよ、クソじじぃ…!」
「――どっちでもいいけどさ!」
俺たちの会話に割って入ったカイトは、今の時代の住民代表なのかもしれない。
信仰うんぬんより、
生きるか死ぬか…だろう。
「リュウちゃんは俺たちが助かる手段がないか、調べに行ったんだろ?それで!?」
カイトを連れてきて正解だったなぁ、と真剣に思った。