記憶 ―黄昏の蝶―
「……それが仮に真実だとして…、分からないんだが…何故その『人柱の彼』が原因で、星の距離まで変わるというんだ…」
法皇は完全に信じてはいない様だが、意外にも柔軟性を見せ、腕を何度も組み直しながら考え込んでいた。
「…そうだよね。その人が原因でこのカロリスが出来ちゃったり、逃がしたら逃がしたでコレでしょ?」
「大層に重要な人物なんだろうなぁ?白い星から来た…、しかし神ではないと言う…」
気が付けば、この状況を前にいつの間にかカイトの緊張も解かれ、法皇と意見を出し合うまでになっていた。
「…それは、ユピテル…人柱が、世界の『運命を紡ぐ者』だったからだ…」
俺は、
静かにそう言った。
「…何?それ…」
「何じゃ?そんなもの…、今…初めて聞いたぞ?」
そりゃ、そうだろう…
誰もが知らない。
知らないまま、
気が付かれないまま、
世界は廻っているのだから。
「……詳しくまでは、俺もまだ分からない。」
「リュウよ、誰に聞いたんだ?異端者の末裔か?ならば、法皇として一度行って詳しく話を…」
法皇はそう腰を上げようとしたが、それを俺が止めた。