記憶 ―黄昏の蝶―
人柱。
すなわち、人の命。
それが掛かっているのだから。
「じじぃ、頼みがある。ジークを…孤児院の監視役として、俺の代わりに住まわせてくれ。」
「…な…に?」
「カイト…柄じゃないかもしれねぇが、子供たちの為に…ちゃんと『父親役』をやってくれ。」
「――…リュウちゃん!?」
カイトは勢い良く、横から俺の腕を掴んだ。
「――…何言ってんの!?それじゃ、まるで…――」
本当に…
この間の冗談が、
現実になっちまうんだよ。
「…ついでに、ビビと…お腹の俺の子供も、面倒見てくれねぇか…。頼むよ…」
「――えっ?え…!?」
「……人柱には、俺がなる。」
カイトの表情は、
忙しなく色んな色に染まり、
最後には、
怒りと涙に変わっていた。
「…――何でだよ!!何でそうなるんだよっ!信仰心の欠片もないくせに!?はぁ!?そんなんが人柱で、何か変わるとか…自惚れんなよっ!!」
「…そうじゃ、リュウ。若いお前より、法皇である私が適任だろう?ちょっと待ちなさい。子供が生まれるなら尚更…」
俺は、
静かに首を横に振った。