記憶 ―黄昏の蝶―
「……俺も、楽しかったよ…」
「――あぁ、知っとるわい。お前は素直じゃないからなぁ。」
「ははっ…、参ったな…」
ユピテルの様に、
記憶を操作できる『魔法』が、俺にも使えれば良いと思っていた。
そうすれば、
彼らを納得させる手間も省けて、段取りなど考えずに済む。
でも、魔法など使えない俺で良かったと、今は思う。
こんな…
「人間らしい」言葉を、
掛けて貰えたんだから。
「…時にリュウ。お前、協会の白いケープはどうした?今身に付けている服は、色が付いている様に見えるが…」
「…あぁ…、どうしたっけな…」
そんな事、
とっくに忘れていた。
カロリスの果てに行く際に途中で着替えて…、カイトの舟の上かもしれない。
今身に付けているのは淡い青色の服で、それもカイトが裾を掴んでいたもんだから、伸びて一段と貧相だ。
「…全く、相変わらずだな。このローブを着なさい。」
法皇はそう溜め息をつくと、自分が着ている長いローブを脱ぎ始めた。
「でも、それは…」
法皇しか着る事が許されないはずの物だった。
金色の刺繍が入った、
足元まで長い、白いローブ。