記憶 ―黄昏の蝶―


俺がユピテルの氷を割った時に、中から出てきたとされる蝶の羽根。

孤児院のじぃさんから見せて貰った小さな箱に入った羽根は、確かにそんな模様をしていた。

図鑑で見た、
それは、「揚羽蝶」――…

新しい、俺の姿…


「…リュウよ、見てみろ。日差しが遠退いたよ…。白い星は元の姿に戻ったようだな…。」

「……全部、本当だったんだね…。リュウちゃんの言ってた事…」


当たり前じゃねぇか。
ふざけんな、カイトめ。

しかし、良かった。
これで俺の大切な人が居るこの世界は、これまでと変わらずに存在し続ける。


――…ふわ…

俺は乾いた羽根を大きく広げ、カイトの手のひらから飛び立つと、彼らの目線の高さでひらひらと舞った。


「――…ぁ。リュウちゃん、飛んだ…」

「…協会の教えに、新たな伝承を作らなくてはな…。世界を救った「蝶」の話を…。」

「…そんなの、リュウちゃん嫌がるよ?ねぇ?」


――あぁ、嫌だね。


「ちゃんとリュウの名は伏せるわい。『幸運の蝶』だ。見掛けても、決して皆が捕まえないように…。自由に空を飛べるようにな…」

「――あぁ、それはリュウちゃんも嬉しいね、きっと!」

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