記憶 ―黄昏の蝶―
――…それは助かるよ。
捕まえられて自由を無くしたら、きっとまた大変な事になるだろうから…
そう爽やかな光が差す空で、
ふわふわと彼らの身体の周りを俺は舞った。
『…すまないな、リュウ…。この街の為に私も出来る事をしよう…』
――…あ。
声に出さない彼らの想いが、
俺には届いていた。
『…リュウちゃん、いつ帰って来れるの?寂しいよ…』
…心が、読める。
これが、先程例の奴等が言っていた『様々な術』の1つだろうか。
『――…さぁ?いつ帰れるかな…。でも、大丈夫。俺の代わりに、お前が家族を守ってくれるだろうから…。だから、安心して俺は行けるんだよ…』
「――…ぇ!?」
…あれ?
カイトは目を見開いて、
俺の姿を必死に追っていた。
「――法皇様!聞こえた!?今、リュウちゃんの声がした!!」
「…はて?聞こえんぞ…」
「――いや、絶対したっ!…うぅ…俺、頑張るよ…。頑張って『お父さん』するよ~…」
……伝わった。
カイトは顔をぐしゃぐしゃにして、空高く離れようとする俺の姿を仰いでいた。
『――じゃあ、皆を頼むよ!』
今度は2人に。
俺は空高くから、声を送った。