記憶 ―黄昏の蝶―
「…まぁ待ちなさいよ、アキラ。捕まえちゃダメだよ…。」
「――何でよっ!」
「落ち着きの無い子だねぇ…、誰に似たの…。前世のお前も、小さい時によく蝶々を追い掛けてたっけ~…」
「――…は!?何それ。今関係ある?そのチンプンカンプンな話っ。」
ははは…と、
アラタさんは目を細めて笑う。
「アキラはおバカさんだからなぁ~。忘れちゃってるだろうね~…」
俺を見上げながら…、
彼は何かを懐かしむ様に、遠い目をしていた。
「……あれはね?アキラ。多分…リュウ君だよ?」
…はて。
何で分かったのか…。
俺自身も疑問で一杯だったが、横に居るアキラは訳も分からずにポカンと父親を見ていた。
『……やっばい。コレ、じぃちゃん呼ぶ?父ちゃん、ついに狂ったかんじ?』
アキラの心の中は、
俺への興味が少しだけ外れ、
父親への心配に変わっていた。
「…父さんね、リュウ君に会った時にさ、初めて会った気がしなかったんだよね?」
……ん?
俺は初めてだったけど…
「……それは、ちょっと俺も。でもカイトに話を聞いてたからだもん。」
アキラの父親に向けた言葉に、俺も「だよな?」と小さく頷く。