記憶 ―黄昏の蝶―
「…ちちち。甘いな、違うんだなぁ~。前世の夢で見れなかったかな?アキラは…」
「――はぁっ?」
「…会ってるよ?皆が…会ってるんじゃないかなぁ。蝶々の姿をした…、時には人の姿をしたリュウ君に…」
アラタさんの言葉に、
頭上で俺も首を傾げていた。
「何処で会ったってゆーのさ。」
「…それは…分からないんだけどね…?……とにかく、捕まえちゃダメ!」
「…何でよ!こんなにウズウズするのに!!」
アキラは唇を尖らせて…、
それでも父親の言葉を忠実に守ろうと、その場で足踏みをして俺を見上げていた。
『…君が、新しい人柱になって…この世界を救ってくれたんだろ…?有り難う、リュウ君…』
俺を見つめる瞳の奥から伝わる、アラタさんの感謝の気持ち。
『……いや?俺がそうしたかったんだ。それより、何処かで会ったか?』
アラタさんに向けた俺の心に、
彼もまた反応した。
『――…さぁ?もしかしたら、…これから…会うんじゃないかなぁ?君が、星を渡った先々でさ…?』
…かも、しれないな?
「…ほら、アキラもリュウ君に手を振って!有り難うって!」
「――はぁ!?」
大きく手を振る2人を、
俺はひらひらと通り過ぎた。