記憶 ―黄昏の蝶―
ほら…
だから言ったじゃねぇか。
「うるせぇ」って、
俺は何度もさぁ…。
そうシラッと目を細めて俺はカイトを見るが、奴はやはり「えへへ」と笑っただけ。
ビビは俺たちと同年代。
昔から孤児院で暮らしていた仲間の一人だが、今は子供たちの世話係としてこの場所に残っている。
言わば、
子供たちの母親代わり。
俺たちも頭が上がらない。
ビビは、
…強いのだ…
「…で?ずぶ濡れの理由は?」
「……コイツ。」
腕を組むビビの問いに、俺は迷わずカイトを指差した。
いつもの事かとビビも悟ったのか、それ以上は何も言わず溜め息を漏らした。
「…もぅ。タオル持ってくるから玄関で待ってて?それから、今…一人起きてグズってるから…静かにね!」
ビビはそう俺たちをキッと睨むと、扉の中へと姿を消した。
「…あ~…起こしちゃった?」
そう言いながら、
カイトは頭に手を当てた。
「…はぁ。もう黙ってろよ、お前。うるせぇから…」
「えぇ~!?俺、そんなに言う程うるさい!?」
しぃ…!
何で分からねぇかな。
「…そのテンションが『うるさい』んだよ…。ビビをこれ以上怒らすなよ…」
…俺が、
後で怒られるんだから…。