記憶 ―黄昏の蝶―


『――時計だよ。』

そう…
もうお前に用があるとしたら、それだけだ。

彼の胸が、
金色に光り出した。


「――ぇ!?」

彼の胸の中から…
金色の丸い物体が、通り抜ける様に飛び出した。

金色の懐中時計。

運命を紡ぐ者が持つ、その証。

それは、証を持つ者を分かっているかの様に、自然と俺の手に収まった。

もう…
「持ち主」は、俺って訳か。

ふっ…と、
諦めの笑いが溢れた。


『…はい、確かに受け取りました、っと。これで、お前さんは「永遠」から解放された。時は進むよ。願いが叶って良かったなぁ、この世界の神様?』

「――!?」

少しばかり…
敵意がこもってしまった言葉。


『…何故、知っているの。でも僕は神じゃない…』

顔を歪めながら、
彼の心がそう呟いていた。


『…でも、この世界の住民はお前さんを「神」だと思ってる。そういう運命さ。』

「……僕…」

彼は自分の口を押さえ、俺に視線を送っていた。


『…あぁ、すまねぇ。俺には心が読めるんだ。お前さんは、それすら忘れてしまっただろうがな…、ははは。』


俺の苛立ちは、
何処にぶつければいい…?


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