記憶 ―黄昏の蝶―


闇の季節…。

子供たちの、
「睡眠時間」は長い。

とても、とても長い…。


「夢」を見る。
毎夜毎夜、長い夢を見る。

見ない日は無い。
見る事が必然だった。


それは必要な夢であり、
大人たちは、
それを妨げてはならない。

それが、
この国の決まり事なのだ。



俺たちも通ってきた道。
この世界の誰しもが、必ず通る逃げようの無い道だ。


それぞれに夢の内容は違う。

楽しい夢、嬉しい夢、
悲しい夢…


夢の中には、
もう一人の自分が居る。


時にその内容にうなされ、
時に…
どちらが現実なのか見失う。



俺は子供時代、
良い夢を見れなかった。
眠るのが怖かった。

闇の季節が早く終わってくれやしないか、毎夜そればかりを考えて過ごしていた。


次の日の朝、
夢の内容を楽しそうに報告し合う仲間たちの輪に、入る事を避けていた。


光の季節になれば、
子供たちは学校が始まり、

『闇の季節に見た夢』

という題材の作文や絵を、必ず書かされる。

それも、
嫌いで嫌いで堪らなかった。



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