記憶 ―黄昏の蝶―
例えば?
…そうだなぁ…
とある砂漠の世界では、
ある時、俺は「商人」だった。
『…恐れながら…ラルファ国王様。海を渡った、かつての敵国サザエルにて、ラルファの元王妃様に瓜二つな人物を見たのです…。あれは、カルラ様でないかとご報告に参りました…』
ある人物に頼まれて、
その情報を流した商人は俺だった。
そこから、
運命は紡がれる。
ある時、俺は…
サザエル国内、サイル本島に住む「気の優しい青年」だった。
『猫ちゃん、可哀想だろっ!!何いじめてるんだっ!』
幼いウィッチの男の子たちが、水の塊をぶつけて追い回していた黒猫を助けた。
ニャァ…
『助けてくりぇて有り難う…リュウさん?』
『ごめんな?ずぶ濡れだな?』
それは運命を導く為に、
助けなくてはならなかった猫。
『…大丈夫よ。アタシ強い子だかりゃ。』
『…そっか、ごめんな?またな、猫ちゃん。』
そう言って頭を撫でた俺。
でも…
それは愛しい人の「前の姿」。
離れがたかった。
本当は、抱き締めたかった。
この先で…、
君も「レン」も辛い思いをする。
それは伝えてはならなかった。