記憶 ―黄昏の蝶―
ある時、
陽の光の届かない、
暗闇の妖精たちの世界で。
俺は、迷いの森を越えて妖精の里へやって来た「人間」だった。
『せつねぇよな~。だから崇拝されてんだ、ユピテル。』
『その本には書いてないけどな、続きあるんだぜ?知ってるか、少年!』
ある少年に、少女を救う為のヒント…「エウロパの涙」の伝承を教えた。
そして、
その世界の人間の地では、
ある時は「ただの学生」だった。
『…あの男の人な?俺の大学の先生なんだけど…』
「…うん?」
『…あの人、妖精なんじゃないかって、俺は思ってる。』
幼い男の子を、
ある人物に引き合わせた。
彼らの運命を紡ぐ事で、
あのユピテルも、
また少し幸せになれる。
迷いの森の番人、
ある少女の黒い「犬竜」…
俺の知る「彼ら」もまた、
この夜の世界の住民だった。
俺は運命を紡ぐ者。
人々も気付かない。
記憶を操作し、その世界の住民に成りすます事だって出来る訳だ。