記憶 ―黄昏の蝶―
何も世界をぐるぐる巡っているだけでもなく…、
俺の本拠地は、
とある世界の星の半分を占める「花畑」。
蝶々らしいだろ?
『…ここは、世界で一番『永遠』に近い場所。各世界とは切り離されてんだ。各世界の時を知れるのは、俺のこの時計だけだ。』
パカッと片手で時計を開け、その文字盤を確認する。
それは、金色の懐中時計。
『さて…ハルカちゃんたちの世界の今の時間は…と。』
仕事に慣れてきた俺は、
もうすっかり「運命を紡ぐ者」として振舞い…。
各世界の中間地点であるその場所で、「洗礼」を受けに来た人々に関わった。
「世界の秘密」を話したり、過去に囚われた哀れな「鬼」を新たな未来へと後押しする事もあったな…。
俺に「七色に光る街」は必要無くなっていた。
星を渡る街。
それが無くとも、金色の懐中時計さえ持っていれば、すぐ目の前に「扉」を作る事が出来た。
星…、
すなわち「世界」を、
時空を越えて渡る「扉」だ。
時にはその扉を使い、
俺だけでなく、人々に世界を渡らせる事もある。
誰でも渡れる訳ではない。
あくまでも、
「運命を紡ぐ為に必要」な場合だけだ。