記憶 ―黄昏の蝶―
人々の笑顔を見るのは好きだ。
しかし俺は、
人々の「脇役」以上にはなれないから、世界を渡った人々には忘れられてしまう存在。
哀しい運命を背負った者。
例え忘れられてしまうとしても、その時に掛けて貰った「有り難う」という感謝の言葉や、笑顔を俺は忘れない。
『…人は助け合いながら成長していくんだよ。いつか本当に遠い未来で『完全』になる為に、6つの世界を旅してゆく。』
そう人々に伝える。
幸せの裏側には、
人々の「涙」や「苦悩」がある。
時には、払った「代償」が大きかったりするもんだ。
だが、
それがあってこそ、
後に繋がる運命もある。
難しいんだよ、
人の運命はごちゃごちゃと…。
それは、俺だって同じ事。
あの水上の街を守る為に、
大切な人々を守る為に、
俺が払った「代償」。
俺が請け負った「役目」。
今も尚、
俺の「身体」は深い水の底で、
冷たい氷の塊の中で、
ひっそりと「中身」が帰る日を待っているだろう。
運命を紡ぐ者である俺も、
世界の運命の、輪の中に在る。