記憶 ―黄昏の蝶―
○エピローグ○
○エピローグ○
世界は、光と闇を繰り返す。
光の季節は、
何度目かを巡っていた。
「――聞いてよ、リュウちゃん!俺だって凄い頑張ってるんだよ!?なのにさ、ヒドイと思わない?思うよね?」
『――…何がだよ?』
孤児院の舟着き場。
白い星に穏やかに照らされたカロリスの水面が、きらきらと辺りに反射していた。
「――お父さんって呼んでくれない。…認めてくれない。」
『あぁ、そりゃ仕方ねぇな。』
子供たちはすくすくと成長していると言うのに、カイトは変わらずカイトだった。
今は孤児院の子供たちに「お父さん」と呼ばれない事に対して、彼なりに悩んでいるようだ。
俺の身体が在る「水上の街」は、
相変わらず人々は活気に溢れて穏やかで、俺の知る全員が健やかに過ごしていた。
幸いにも、孤児院の院長も法皇もまた健在だった。
無いものは、
彼らに交ざって在るはずの「俺の姿」だけだ。
『…くだらねぇ事で悩んでんじゃねぇよ…』
時に俺は、
ふいにカイトの前にひらひらと現れる「蝶々」だった。