記憶 ―黄昏の蝶―
「…おじぃちゃんも、僕みたいにたくさん泣いた?」
気が付けば、子供の背中からは震えが無くなっていた。
「…あぁ、沢山泣いたよ…。皆と違って、どこか寂しい夢だったからのぅ。…わしだけじゃない。あのリュウだってなぁ、毎夜毎夜…今のお前さんみたいじゃった…」
ふふふ…とじぃさんは懐かしみながらか目を細め、愉快そうに笑っていた。
…げ…。
俺の話を出すんじゃねぇよ…
「…え?お父さんも?」
「――…う、んん!」
俺はぎこちない咳払いをして、扉をギィと開けた。
「…リュウお父さんっ!」
子供が俺を振り返るなり明るい声を出し、じぃさんの膝から下りると、
「おかえりなさい!」
とその場を駆け出して俺の膝に抱きついてくる。
「…おやおや…、聞かれてしまったかのぅ?」
愉快そうに笑うじぃさんに、ふっと目を細めて「ただいま」と挨拶。
子供の栗色の髪を撫でると、見上げた大きな瞳には一度収まったはずの涙。
「…レン、ただいま…。また悲しい夢を見たのか?」
「うん…。ねぇ、お父さんも泣いてたって本当?」
じぃさんをちらりと見ながら、
「………昔は、な?」
と俺は答えた。