記憶 ―黄昏の蝶―
それらを囲む様に、
広場の外側半周では、祭り特有の露店が各店主の手によって生き生きと並び始めていた。
暗い闇の中、
沢山のランプが揺れ始める。
露店のランプは、普段の生活から使用している「橙色」。
その光に負けじと競う様に、
協会側の用意した「青色」のランプがいくつも灯り出す。
「……さて…」
こんなもんかな?
俺は全体的なバランスを見ようと広場の片隅へと移動し、右から左へと周囲を見回していた。
祭壇の在る広場の中心は青く灯り、物静かな神聖さが漂う。
その青を…
取り囲む様に、
馴染みある橙色の暖かな光…。
特別な夜。
幻想的な空間…。
この広場の光景を楽しみに待っている民も多い。
毎年そうなのだが、
ひとつの芸術作品を作り上げるかの様で、なかなか気を遣うのだ。
周囲の反応はどうか、と舟で行き来する人々を横目で見ると…
ほら…見ろ。
舟師までもが漕ぐ手を止め、この光景に溜め息を漏らす。
「…綺麗ですね。この光景を見ると、今年も無事に光の季節を迎えられる事にホッとします…。毎年の準備、有り難うございます…」
通りすがりの民だろうか。
そう女性の声に話し掛けられた。