記憶 ―黄昏の蝶―
しかし…だ。
ビビの事だから、その好意すら手玉に取っている気がしてならない。
「じゃあ、また明日!」
仕事を通じてだが、明日もビビと会えると確信した舟師は非常に嬉しそうだ。
ペコリと少し離れた俺にも丁寧に頭を下げ、船着き場から離れて行った。
「ふぅん…」
舟の灯りが小さくなると…
俺は小さく溜め息をつき、ニヤリと含み笑い。
「うちのお母さんは、モテモテなんだなぁ?皆。」
部外者が居なくなり仮面を外した俺の言葉を合図に、子供たちが我先にと口を開く。
「うん!お母さん人気者なんだよ!ね~?」
「…今日はお父さんが居たから早く帰った方だよ?いっつも荷物運びまでしてくれるんだ、あのお兄ちゃん。」
え…
そうなのか?
「…あら、リュウ様の人気に比べたら私なんてまだまだですわよ?ふふ…!よし、リュウの奪還成功!感謝してよね、リュウ。」
「いや、本当…」
「…お父さん、遊ぼう~!?」
ビビに感謝の気持ちを表す間もなく、子供たちは俺の腕を取り家の中へ早く入ろうと催促する。
「…おい、待て待て。そんなに慌てなくても今日はもう出掛けねぇよ…」
わはは…と笑う俺の視線には、ビビの満足そうな顔。