記憶 ―黄昏の蝶―
「…よし。じゃあ、ミートパイが焼けるまで…何をして遊ぶかっ?」
「ん~とねぇ…!」
ギィ…
そう子供たちの笑顔を見つめながら居間の扉を開けると、
――ヒュン。
と飛んできた何かが、
俺の顔面にポンと当たった。
「…いてぇな、何だ?」
速さの割りに、衝撃は無い。
ふと床に落ちた物体に目を向けると、どうやら丸められた紙屑。
「おぉ~リュウちゃん、おかえり。ごめん~当たっちゃった!」
声の主に目を向けると、居間の隅で何やら棒切れを構えたカイトが子供たちに囲まれて笑っていた。
この紙屑を飛ばしたのは奴。
そこから?
何の為に…?
「あれぇ?カイト兄ちゃんだ!皆で何してるの?」
顔をしかめながら紙屑を拾い上げる俺の横で、楽しい事なのかとレンが顔を輝かせる。
「ヤキュウだよ!ヤキュウ!」
「「…ヤキュウ?」」
俺と共に居間へ入った子供たちは、何それ?と俺の顔を見上げる。
しかし、その遊びはこの世界では馴染みの無いもの。
俺は少し困った顔をして口を開いた。
「…玉を投げて、打って、捕る!そんな遊びだったか?確か…」
棒切れを肩に乗せながら、カイトがニカッと歯を出して笑った。