記憶 ―黄昏の蝶―
ヤキュウ。
それは幼かったカイトの夢の中で、毎日の様に繰り広げられていた出来事。
玉を投げたり、
棒切れで打ったり…
毎回泥々になるまで、沢山の仲間たちと広い土の上で走り回っていたんだと、昔はよく聞いていた。
夢の中の…
うろ覚えな遊びを現実の物にしようと、カイトは夢中だった。
それに俺たちも付き合って、
この居間で…
「…わはは…懐かしいな…」
目の前に在るのは、
昔と同じ光景だった。
「だろっ?昨日さぁ、久々にヤキュウしてる夢見ちゃって!今、子供たちに教えてたトコなんだよ~!」
広い土の上で走り回る事。
この水ばかりの現実世界では叶わない、言葉通りの夢みたいな事。
カイトはその夢に未だに囚われて、『土売り』をしているに違いなかった。
確かに…
いつも聞いていたカイトの夢の話は、羨ましい位に楽しそうだった。
「えーと、夢の中のカイトは…確か…『ハヤシ君』だっけ?」
記憶を巻き戻して探る様に聞く俺の前では、カイトの夢の話に影響を受けたであろう子供たちがワイワイと奴を囲んで続きをせがむ。
「コバヤシ!…分かった、待てって!続きな!?」
「あぁ、コバヤシ君。珍しく人気者の様だ…。」